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八柳優希(やなぎゆうき)とは小学二年からの付き合いとなる。
俺達は違うクラスで、お互いに居場所がなかった。
「そういう奴ら」は図書室にいつの間にか逃げ集う。
そんな場所でたまたま出会い、たまたま仲良くなった。
「学校、楽しいよね」
いつだったか優希はそんなことを言っていた。
俺が何も言わないでいると、「中学校はもっと楽しいといいなぁ」と呟いた。
中学に上がると、俺達は別々のクラスになった。
相変わらず誰も俺に近付かなかったが、幸い小学時代被害に遭っていた嫌がらせやいじめはなかった。
俺にとっては天国だった。
優希は、酷いいじめに遭っていた。
優希が動かなくなるまで暴力を振るったり、机を窓から投げ捨てたり、教科書類を破いたり。
どれも聞くに堪えない話ばかりだった。
そんな話を知らず、俺は優希と一緒に登下校していた。
小さい頃からそんな扱いばかりで慣れてしまったのか、優希は暗い表情をするでもなく、楽しそうに自分の好きな本や映画の話をしていた。
俺の方もこういう時に気を遣われる方が心が痛くなるということを知っていたので、優希から話を振ってこない限り、それ以上踏み入らないようにしていた。
いや、違うか。
本当は全部知っていて、その上で動かなかった。
結局俺も、他の奴らと対して変わらなかったのだ。
家から近いというだけで選んだ高校には、何故か優希がいた。
高校受験はしないと聞いていたのだが気が変わったのだそうだ。
俺は内心また中学の時のようになってしまうのではないかと心配だったが、クラスには直ぐに打ち解け、友達も出来たようだった。
「もっと早くそうなればよかったのに」と思った。
これまでの優希の状況を知っている人間ならば、それがどれだけ幸せなことであるかわかる筈だ。
けれどもう、遅かったのだ。
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