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そこに一陣の風が吹き抜けた。
「あっ」
胸元に留めていた学年を表す青いリボンが解けて、ふわりと風に流された。伸ばした手は宙を掴み、リボンはバラ園の奥まで運ばれていった。急いで追いかけたが見失ってしまったかと落胆した時、園を囲むようにある背の低い植え込みに裂け目があった。そこに見覚えのある青いリボンが落ちていた。
ほっと胸をなでおろして近づく。もう数センチのところで、また悪戯に風が吹く。そうやって数は進んだ先でやっと拾い上げた。
「ふーー。……あれ?あれはバスケットコート?」
ずっと下ばかり向いていて気づかなかったが、目の前にはフェンスで囲われただけのバスケットコートが現れていた。よく見るとそこにはゴールに向かって構える背中があった。
その瞬間、ふわりと浮いた体躯のすらりと伸びた腕からボールが弾け、柔らかな弧を描いてネットを揺らした。その間一瞬で、地面にボールが落ちるまで全ての音が消えていた。
ふと彼が振り返った。意志の強い瞳と視線がぶつかる。その瞳が遠くからでもわかるほど大きく見開かれた時、彼の大声が空を切って耳に届いた。
「おい!そこで何してんだ!!」
「へ?」
「へ?じゃねぇよ。ここ立ち入り禁止だろうが!分かっててやってんだったら処罰もんだぞ!」
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