父と母

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それから1年後、母の新盆を迎えることになった。 お寺のお坊さんにお経を読んでもらい、その後お坊さんと親戚で食事をした。 8月13日に、僕が実家で迎え火を焚くと僕のスマートフォンでメールの着信を知らせる音楽が鳴った。 迎え火を見守りながらメールを見てみると、差出人が母になっていた。 どういうことなのだろうかとメールを開いてみると、母と思われる言葉が書かれていた。 「ひろし、私は天国でおとうさんと再会しました。  おとうさんは、相変わらず園芸の本を見ながら野菜を作っていて、何かとがみがみと怒鳴っています。  おとうさんは、言葉遣いが荒いけれど、根はとても優しい人です。  そのことは、私が一番よく知っていますよ!  ひろし、私は今とても幸せです。」 僕は、このメールを見て、母がこのことを僕に知らせるために、迎え火を頼りに母の魂が家に帰って来ているのだと感じた。 メールの内容を見ながら僕は、父と母が2人で生活していた頃のことを思い出した。 8月16日、僕は送り火を焚きながら、母にメールを送信した。 「おふくろさん、おやじさんと仲良く楽しく過ごしてください。  僕達家族の事も、天国から見守ってくださいね!」 僕がこのメールを送信すると、エラーにはならずに送信できたようだった。 僕は、きっとこのメールは母の携帯に届いて、僕が書いた携帯電話の操作手順のメモを見ながら、母はメールを見てくれるだろうと思った。
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