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父の病状は、日増しに悪くなっていることが、素人の僕にもはっきりとわかった。
入院して2ヶ月ほどすると、父は手が思うように動かなくなり、僕と母が食べ物を口に運んで食べさせた。
さらに3ヶ月ほどすると、おかゆも口に入らなくなり、点滴で栄養補給しながらヨーグルトやプリンといった食べ物を食べさせた。
さらに1ヶ月ほどすると、食べ物はいっさい受け付けなくなり、顔には黄疸が出て、足はむくんで膨らんでいた。
僕は母に、
「そろそろ覚悟しておいて!」
と伝えた。
ある日の日曜日、僕と母がいつものように病院に行くと、この日の父は、僕たちの存在がまったくわからないようだった。
さすがにこの日は、病院に泊まり込もうかとも思ったけれど、僕は翌日会社で、高齢の母を病院に置いていくのは不安があった。
この日の僕は、何かいつもと違う不安に襲われていた。
夜実家に帰って母と一緒に夕食を済ませると、病院から電話が入った。
電話は、父の息が止まりそうだという連絡だった。
僕と母は、急いで車で病院に向かった。
父の病室に入ると、すでに父は息をしていなかった。
僕が父の頬にそっと手を触れると、まだ温もりがあった。
家から病院までは、車で20分程度の時間だから、ほんの少しの時間、父の最後に間に合わなかったのだろうと思った。
早速、葬儀屋さんを呼び出して、父の遺体を実家まで運んでもらった。
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