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彼は右手をひらりと振って、厨房へ向かおうとした。その背中を、インデックスが引き留める。
「待て待て。焦るなよ。これがだな、いろんな組織に狙われた挙句、店をやめて姿を晦ましちまったんだ。流れ着いた先が、さっき言った街だ。今じゃ、街路で立ちんぼさ。こりゃ、好機だぜ?」
ポレックスはくるりと踵を返し、再び輪の中に加わった。四人はもう一度、インデックスを取り囲み、彼の話に耳を傾けた。
他の客達はぼんやりと飲み物を啜ったり、新聞を眺めたり、バラエティ番組に夢中になったりしていて、彼らの話になど全く興味がなさそうな様子だ。五人の周囲の時間は、緩慢に過ぎていき、五人だけが他とは切り離された空間にいるようだった。
「問題は、この女と誰が接触するかだが……」
「……お前が行けばいいだろう?」
アーヌラーリウスが首を傾げて、インデックスを見ながら言った。その彼の肩を掴んで、ミニムスがにやにやしながら、耳打ちする。
「いいのかよ。高級娼婦だぞ? お前が遠慮するなら、俺が行くぜ?」
ミニムスの声が聞こえていたのか、それともアーヌラーリウスの言葉に応えたのか、インデックスは首を横に振り、難しい貌で言う。
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