-Ⅰ-

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 彼は右手をひらりと振って、厨房へ向かおうとした。その背中を、インデックスが引き留める。 「待て待て。焦るなよ。これがだな、いろんな組織に狙われた挙句、店をやめて姿を晦ましちまったんだ。流れ着いた先が、さっき言った街だ。今じゃ、街路で立ちんぼさ。こりゃ、好機だぜ?」  ポレックスはくるりと踵を返し、再び輪の中に加わった。四人はもう一度、インデックスを取り囲み、彼の話に耳を傾けた。  他の客達はぼんやりと飲み物を啜ったり、新聞を眺めたり、バラエティ番組に夢中になったりしていて、彼らの話になど全く興味がなさそうな様子だ。五人の周囲の時間は、緩慢に過ぎていき、五人だけが他とは切り離された空間にいるようだった。 「問題は、この女と誰が接触するかだが……」 「……お前が行けばいいだろう?」  アーヌラーリウスが首を傾げて、インデックスを見ながら言った。その彼の肩を掴んで、ミニムスがにやにやしながら、耳打ちする。 「いいのかよ。高級娼婦だぞ? お前が遠慮するなら、俺が行くぜ?」  ミニムスの声が聞こえていたのか、それともアーヌラーリウスの言葉に応えたのか、インデックスは首を横に振り、難しい貌で言う。     
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