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「いや……それはもう少し彼女についてわかってから決めたい。何せ、相手は元高級娼婦だ。何をしゃべるかは、向こうの気分次第さ」
「その通りだな。性格なんかも考えた上で、俺が選ぼう。それでいいか?」
ポレックスが一同を見回した。四人は即座に頷いたが、直後ミニムスが不満げに言った。
「ちぇ……つまんねえ」
その言葉に、一同は大声を上げて笑い出し、そこで初めて、店内の客達が彼らに視線を向けたのだった。
町が深い宵闇にすっかり沈んだ頃になると、アーヌラーリウス達のカフェは、バーに姿を変える。メニューも軽食から酒のためのものになり、昼間とは全く違った層の客が、煌々と照るネオンの下に集うのだ。
バーに集まった客達はフォーマルな装いの者が多い。中には無頼漢もいるようだが、彼らもまた、紳士然とした男達と盃を交わしていた。昼間であれば決して接触することはないのでは、と思える人種が店の空気を触媒にして交流していた。
薄暗い灯りが一層、場の雰囲気を妖しく演出し、客達のさざめきが飲んだ量に関わらず、酷く彼らを酔わせた。
Cafe & Bar Fingers
そこに集ったのは、各方面での情報筋と呼ばれる人間達だ。
ある者はジャーナリスト。ある者は政治家。ある者は裏社会の要人。
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