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種々雑多な人間が、自分の欲する情報を求めて、このFingersに立ち寄り、酒を酌み交わす。
そんな危うげな人間を相手に、Fingersのスタッフは軽く言葉を交わしながら、注文の品を提供する。もちろん、ただ頼まれた料理を運ぶだけではない。彼らは皿の下やコースターの裏に隠された情報と一緒に、運ぶのだ。
席番を耳打ちされ、それを頭に叩き込み、料理の下に手渡された紙切れを仕込んで再びホールへ出る。彼らは愛想のいい笑みを振り撒きながら、薄明りの下で息もつけぬほどのことをやってのけるのだ。
もちろん、その代価として様々な情報をいただくのを忘れない。
「……インデックス、そろそろ出番だ」
キッチンで腕を振るっていたポレックスが、装着していたインカムに向かってぼそりと呟いた。すぐに返答があり、直後店の入り口が開いた。
真っ直ぐにカウンターへ向かったインデックスはくたびれたスーツを着ていた。空いている席に腰掛けると、すぐさま一人の男が近寄った。ブランドのスーツに身を包んだ、金回りのよさそうな中年の男だった。
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