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男が二、三訊ねると、インデックスはそちらへは貌を向けずにぼそぼそと何やら呟いた。彼が隣の席を勧めると、男は茫然とした表情で彼の隣に腰掛けた。そのまま頻りに頷いていると、インデックスはそれを指摘したらしい。男は周囲を見渡すと、インデックスから視線を外し、一人で飲んでいる風を装った。数分すると、男はインデックスの隣を空けた。
男が去って数分。また別の男がやってきて、インデックスの横を陣取った。さっきの男に比べ、やや粗雑な雰囲気の男だ。彼もまた、インデックスの隣で酒を飲みながら、情報のやり取りをしているらしかった。
「恩に着るぜ」
「ああ、うまくやってくれ」
二人はそれぞれ、独り言を溢すように言って、席を立った。
インデックスはグラスを持って、窓際のテーブルへと向かった。その先で、三人の男女が談笑に耽っていた。そのうちの一人がインデックスに気づいて、小さく手を挙げた。他の二人も彼に会釈をする。それに答えながら、インデックスが訊ねた。
「どうですかな、この店は」
「なかなかです」
紳士然とした若い男が答える。赤みがかった髪をきっちりと分けた彼は、隣の女へグラスを傾けた。
「彼女、スウィーニー議員の義姉だそうで……。彼、無類の酒好きだそうですね」
「本人は隠しているみたいですが……そのようですな」
控えめに微笑む女を横目に、インデックスは答えた。
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