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「今日も、行きつけのお店に行ってるって、妹から連絡があったのよ。じゃあ、あなたはこちらへ来たら? って言ったら、それは怒られるからできない、ですって。今時、女に自由を許さない夫なんて、あり得ないでしょ?」
女は酔っているのか、上気させた頬を緩めて肩を震わせた。その隣にいた中年の男がそれを見て、
「全く。いくら自分より条件のいい結婚をしたからって、それはあまりに露骨じゃないかね?」
「うるさいわよ。いい嫁でいてほしかったら、稼ぎなさいよ」
「おいおい、ちょっと自分の方が稼ぎがいいからって――」
「まあまあ」
諍いが始まりそうな二人の間に、インデックスがすかさず入り込んだ。加熱した二人の空気は瞬く間に冷めていく。呆気に取られている二人の貌を交互に見て、インデックスは遠くにいたメディウスに声を掛けた。
「こっちにモヒートを二つ!」
メディウスがそっと頷くと、カウンターのアーヌラーリウスにそっと耳打ちした。
アーヌラーリウスはモヒートを二つ、トレンチに乗せてカウンターを出た。犇めく客を躱しながら、インデックスの待つテーブルへとゆっくりと近づいていく。インデックスはすでに、女と向き合っていて、にこやかに話し込んでいた。隣の中年も同じく、表情を和らげているのがわかる。
「スウィーニー氏の行きつけというのは、どこの店なのです?」
「そんなことが気になるの? どうせ、パッとしないところでしょ」
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