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「酒好きもあるけど、バーマニアだよなあ、ダニエルは」
夫が髭を蓄えた顎を擦りながら、天井を見上げた。モヒートをくるくると弄びながら、スウィーニーの貌を思い浮かべているらしい。彼の様子から、スウィーニーをそれほど嫌悪していないことが窺えた。
アーヌラーリウスは耳を聳たせ、彼の声に意識を集中した。もちろん、メニューを探す手は休めず、散らかったテーブルの上を片付けている。
「私は何軒か知っているよ。ダニエルとは、時々飲むからね」
「ちょっと! あなた達、いつの間にそんな仲になったのよ!」
夫人がすかさず、夫を睨む。彼はたじろぎながら、言い訳でもするように答えた。
「いつの間にって……。ダニエルはいい奴だ。君が変に意識し過ぎなんじゃないか?」
「何よ! 私が嫌な女みたいじゃないの!」
「そうですよ、ご主人。自分の嫁を悪く言うのは、感心しませんな……。まあ、非の打ちどころがないと、粗を探したくなるものですがね」
インデックスがすぐに火消しに回り、夫人の機嫌も持ち直す。
「ところで、スウィーニー氏のよく行く店の話ですがね……」
「ああ、四、五軒はあるはずだよ」
「なるほど。上流階級の方々が足を運ぶ店、というのを見てみたいものですな」
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