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「ああ、あんたか。まあね」
女は高く通った鼻を顰めて洟を啜った。さっきまで泣いていたのだろうか、目が赤い。よく見ると、アイシャドウやマスカラが崩れて、目の周りが真っ黒だった。
気の強そうな目元を拭って、女はインデックスに寄り掛かる。彼は彼女の薄い肩に腕を回して、艶やかなその肌を優しく撫でた。
「僕に言えることなら、話すといい」
夫人や赤毛の男の時とはまた違った声色を作って、インデックスは彼女を促した。女はまた目元を拭って、静かに語り始めた。
「このままじゃ、あたし生きていけないよ……」
黒い涙が、照明で細かく煌く肌の上を滑った。
流れるままに涙を流すハンナに、インデックスは優しい眼差しを向けながら、大げさに驚いて見せた。
「そりゃあ、大変だな。怖いかい、ハンナ」
インデックスは彼女の肩を優しく引き寄せながら語り掛ける。ハンナは小さく頷き、運ばれてきたウォッカを煽った。そして、盛大に噎せた。
「おお、おお、無理はよくない。ほら……水を……」
噎せ返る彼女に水を手渡すと、インデックスは彼女の背中を擦った。その手つきは何とも下心に溢れていて、彼女の身の上話を聞く男の姿勢には到底見えない。
「もういいわ」
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