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ポレックスはその長身を捩り、階段を降りてきたアーヌラーリウスを睨んだ。
「そんなに睨まなくても、すぐに行くよ」
「じゃあ、ぼさっと突っ立ってねえでドリンクの注文を片付けろっ!」
怒鳴られたアーヌラーリウスは、肩を竦めてポレックスの隣に立った。コルクボードに張りつけられた伝票を眺め、早速グラスを並べる。冷蔵庫を開けて、冷えたビール瓶を二本、取り出した。栓を抜き、二つのグラスに注ぐ。
「こんな朝っぱらからビールが飲めるなんて、羨ましいかぎりだな」
そう独りごちていると、ポレックスが怒鳴る。
「無駄口叩いてねえで、運べ!」
トレンチにグラスを乗せて、ホールに出ていたメディウスに渡す。
「ほらな、ご立腹だ」
「今日を生きて乗り切れないかもしれない」
「ほらっ! 次だっ!」
背中を強烈な衝撃が襲う。じんじんと痛む。メディウスと肩を竦め合って、仕事に戻る。
このカフェは、数か月前に開店したばかりだ。料理人の経験があるポレックスを中心にして集まった五人で切り盛りしている。開店当初はなかなか客が来ず、一日中暇を持て余していたが、仕入れを担当するインデックスのおかげで、ようやく軌道に乗り始めた。
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