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 そのため、以前のように開店時間を過ぎて寝ていても許されることはなくなってしまった。店が繁盛することは嬉しいが、昼間の明るすぎる光の中で微睡む心地よさを味わえないのは少し惜しい。 「アーヌラーリウス、また寝坊したのか」  厨房に身を乗り出し、からかいがてら声を掛けるのはミニムスだ。明るい赤髪が外から差し込む光に透かされる。アーヌラーリウスはドリンクを渡しながら、苦笑いを返した。 「いいよなあ。俺もベッドに帰りたいぜ」 「なら、帰ればいい。次の日になれば、心労で倒れる」  そりゃあ、勘弁だ。大げさに声を上げ、ミニムスは仕事に戻っていく。その背中を見送りながら、アーヌラーリウスも残った注文の品を片付けていく。  あらかた注文の品を客に出し終えた時、テレビの中で天気予報を伝えていたアナウンサーの声色が変わった。型の古い、奥行きのあるテレビが放つ、シーンという音が妙に際立つ。 「先週、突如として焦土と化した英国を、我が取材班が上空から撮影することに成功しました」  アナウンサーがそう言うと、画面は黒く焼け焦げた大地を映し出した。大規模な山火事によって、焔が大地を舐めていった後のような光景だった。 「ここは首都、ロンドンです。御覧ください。何も……何も残っていません。何も残らず、灰となってしまったようです」     
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