執筆の場

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 あくまでも小説執筆のための作業環境を得るのが目的で、正直お茶の味など僕にとってはどうでもよかったのです。ところが、毎回アイスティ-のショートを頼むパソコンバックを肩から提げた眼鏡野郎というのは、どうもお店の人の印象に残りやすいようです。 「いつもご利用いただきありがとうございます! アイスティーのショートサイズですね?」  とうとう、とある男性店員にこんなことを言われるまでになってしまった。わかってくれる人が必ずいると信じて書きますが、僕は店員に顔を覚えられると気後れしてしまいます。なんか変なあだ名でもつけられて、バックヤードで笑いものにでもされてやしないかと。 (うわ! また一番安いやつ注文してるよ) (何回トイレ行くんだよあいつw) (いつもパソコンで何かしてるけど、もしかして小説でも書いてんのww) (何時間いるんだよ、早く帰れよ……)  考えすぎなのはわかっております。てめーのことなんか誰も興味ねーよって感じですよね。そのお店には、いつも何も注文せず席につき勉強をする非常識な高校生がいて、店員たちのヘイトは彼に集中していると思われるので僕はセーフなはず。  顔なじみになって、マニュアルを少し超えた血の通った接客を受ける。別に嫌だと言うわけではありません。ありがたいですよ。でも、なんだか気後れしてしてしまうのです。 「いつもご自宅を何を飲まれているんですか?」 「お店で使っているティーバッグも販売しておりますので、よろしければ」     
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