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広くないバスルームに湯気が籠もる。
白く曇った鏡にシャワーを掛けた。
玉になった滴(しずく)が、鏡を滑り落ちていく。
幾筋も出来たその隙間に、濡れすぼった自分の姿が映った。
――招待状、出来たら送るから。
夕方掛かってきた広斗からの電話。
円香さんが自作したらしい、結婚式の招待状。
離れて住んでいるからか、ただ見せたいからか。
どっちかは知らないけど。
「わざわざいらねーっつーの……」
蛇口を強く捻(ひね)る。
無音の空間に、それが甲高く響いた。
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