scene.4

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 言いにくそうにおずおずと言われた名前は、同じ部だし出てきても不思議じゃない。  それでも、無意識にしてしまっていた期待のせいで、浮き立った気持ちは簡単に落ちる。  てか、なんで健太? 仲良かったっけ? 「うん、そうだけど。高校ん時のサッカー部の後輩。 言ったことなかったっけ?」 『うん、聞いてない』 「そうだっけ? で、それがどうかした?」 『別に……なんでもない。詩穂から聞いたから、聞いてみただけ』 「ふーん。用って、それだけ?」  美亜は短く「うん」とだけ返事をすると、黙り込む。  脳裏にちらつく招待状。  健太の顔。  置いたビールの缶が、思ったよりも大きな音を立てた。
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