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「ふ……っ」
美亜が顔を伏せて、それを両手で自分へ向かせた。
「美亜」
美亜は一瞬だけ目を合わせて、すぐに顔を伏せてしまう。
電気が付いていない玄関。
リビングから漏れる明かりだけじゃ薄暗くて、ちゃんと見せてくれなきゃ見えない。
美亜の顔。
俺だけに見せてくれる顔。
「美亜」
美亜の顔を包んでいた両手を、髪の中へと滑らせた。
引き寄せるように軽く掴むと、柔らかい髪は指の隙間から零れていく。
「……美亜の顔、ちゃんと見せて」
少しの間のあと、美亜はそっと顔を上げた。
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