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「……ああ」
健太を見返しそう答えた俺に、
「ふーん、そうですか。だったら良かったです」
健太はにこりと笑う。
それは、いつも会社で見せている人懐っこい笑顔だった。
「あ、そういえば、この前言ってたK社のことなんですけど」
健太が思い出したように言った。
「結構無理な条件出されちゃって。明日一度、見てもらえません?」
「あ、うん。わかった」
頷いた俺に健太は礼を言うと、メニューで飲み物の物色を始めた。
カウンターの店員と二言三言話し、彼が勧めたものを俺にも勧める。
程なくして運ばれてきたのは、冷酒だった。
乳白色の小さなビンに入ったそれは、飲み口が柔らかくスッキリとした飲みやすい味だったけど、どことなく苦く感じた。
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