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確かに美亜とのことを話したりはしていないけど、それ以外、別に隠すようなことなんかなかった。
そう、なにも。
毎日変わり映えしない日々を、流れていくそのままに身を任せ、忙殺され、なにも考えずに過ごしてきただけだった。
そんな毎日が色付き始めたのは、美亜と過ごすようになってからだった。
浮き出ようとしてくる感情を押し込み、テーブルに置いていたタバコに手を伸ばし、火を付ける。
ふわりと流れていく煙を、目で追った。
「ま、言いたくないんだったら、別に言わなくてもいいけどさ」
木本は呆れたような顔でそう言い、新しい串へと手を伸ばす。
「それよりさ、咲良(さくら)ちゃんの話聞かせてよ」
「おまえ、さっきからそればっかだな」
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