scene.6

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「お待たせ致しました」  また追加した焼酎を飲み干した時、店員がテーブルに来て、まだ来ていなかった料理を置いていった。  ついでに新しい酒を頼もうとし、届いたそれが目に映り、呼び止めようとした声が出なくなった。 ――えっ、あ、はいっ。おいしい……です。  蘇る美亜の声。  美亜の顔。  店員が持ってきたのは、前美亜と一緒に食べた和牛のかぶりのステーキだった。  注文を木本に任せていて、これを頼んでいたことを知らなかった。  その時の美亜が見せた、恥ずかしそうに頬を赤く染めた顔を思い出し、胸の奥、ずきりと痛みが走った。  もし、あの時。  いや、あの時じゃなくても、もっと早く――。
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