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「お待たせ致しました」
また追加した焼酎を飲み干した時、店員がテーブルに来て、まだ来ていなかった料理を置いていった。
ついでに新しい酒を頼もうとし、届いたそれが目に映り、呼び止めようとした声が出なくなった。
――えっ、あ、はいっ。おいしい……です。
蘇る美亜の声。
美亜の顔。
店員が持ってきたのは、前美亜と一緒に食べた和牛のかぶりのステーキだった。
注文を木本に任せていて、これを頼んでいたことを知らなかった。
その時の美亜が見せた、恥ずかしそうに頬を赤く染めた顔を思い出し、胸の奥、ずきりと痛みが走った。
もし、あの時。
いや、あの時じゃなくても、もっと早く――。
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