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「て、え、陽斗? どうした?」
「……え?」
木本を見遣れば、目を丸くし驚いたような顔で、俺を見ていた。
「なに?」
「いや、なんつー顔してんだよ。おまえ、これ好きじゃなかったっけ?」
「え、あ、うん。……好き」
「はは、まじで今日、おまえ変だな。本当、なんなんだよ」
「うん、悪い。……ちょっと酔ったかも」
「なんだよ、それ。おまえは女子か。
まぁ、なんかわかんねーけど、とりあえず食っとけ食っとけ」
木本が笑い、ステーキの皿をずいっと前に出してきた。
言われるまま、皿から一切れ取り、口に運ぶ。
「……うん。うまい」
ゲン担ぎで何度も食べたそれは、今日も変わらず美味しかった。
そして、今日はなぜか無性に泣きたくなった。
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