scene.6

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 柄にもなく熱を帯びてきた目を落ち着かせるため、タバコに火を付けた。  木本は奥さんが出産したのを機に完全に止め、たまに手持ち無沙汰な様子を見せるけど、特に吸いたそうな顔は見せていない。  吸い始めてから数年が経ち、当然のようになっている習慣。  いつから吸い始めたんだっけ。  当時を思い返してみれば、大学時代にバイトしていたバーで常連さんに二十歳の誕生日を祝ってもらい、ジッポとカートンのタバコを渡されたことだった。  二口だけ吸ったタバコを灰皿に揉み消す。  まだほとんど中身の残った箱を、ポケットへと滑らせた。
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