121人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
この状態の美亜に話しかけるのは勇気がいって、及び腰になっていた。
やっぱり止めておこうか、そんな気持ちがすぐ後ろに待機していた。
それでも、今のこのチャンスを逃したくない。
これ以上先に延ばせば、もっと話しかけづらくなるのは目に見えていた。
「あのさ、美……」
ガタン、と美亜が立ち上がった。
「……詩穂、わたし外出たいから、先行くね」
「え? 美亜、ちょっと……」
「ごめんね、お疲れさま」
美亜は夏川さんに被せるように言い、こちらを見ることなく、少し早足でカウンターへ歩いて行く。
美亜のトレーの中身は、半分ほどしか減っていなかった。
小さくなる美亜の姿を追っていた夏川さんが、こちらへ振り返る。
俺と目が合うと、気まずそうに視線を泳がせた。
最初のコメントを投稿しよう!