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「高瀬君、傘持ってきてる?」
「いえ、持ってきてないです」
「じゃあ、これ持っていって。もう降りそうだから」
「すみません。ありがとうございます」
ビニール傘を渡してくれた取引先の人に礼を言い、外に出る。
空を見上げると、薄暗い空には今にも降り出しそうに灰色の重い雲が広がっていた。
そう言えば、朝見た天気予報で雨が降ると言っていた。
傘を持ってこようともせずに、一体なんのために、わざわざ付けていたのか。
無意識に落ちるため息を放置したまま、腕時計を見る。
もう17時半を過ぎていて、取り出した携帯にも着信は残っていなかった。
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