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男は懸命になって、危篤状態の妻のために窓を探した。美しい花々が咲き、空にはこぼれ落ちそうな程の星がきらめく窓を。
そしてその窓は遂に男の目の前に現れた。
男は嬉しさで震える油臭い手に、はーと息を吹きかけた。
「綺麗だろう?」
言うと妻は「ええ、とても」と涙し、そのまま目を閉じた。
別れの式は、ひどく寒い冬だった。遺族や参列者の心は悲しみと寒さとで震える。
けれども、男だけは嬉しそうに「最期に俺は、あいつの望む窓を見せてやったんだ」と、笑っていた。
皆は首を傾げた。
だって彼女は、失明を患う病に罹っていたのだから。
白い花を手に持ちながら妻に寄り添う夫の手には、様々な色の星がちりばめられた夜空があった。
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