早朝の交差点にて

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十年程前に、兄が体験した話。 当時兄が住んでいたアパートの近くには、そこそこ広い交差点があった。 ある日、その交差点で事故が発生し、歩行者の男性が命を落とすという痛ましい出来事が起きた。 それから暫くして、早朝のランニングを日課にしていた兄がその交差点を通ると、突然どこかから線香の臭いが漂ってきたという。 “ん? 何だ……。こんな朝っぱらからどうしてこんなとこで線香の臭いなんかするんだ?” そう思い、走りながら周囲を見回せばすぐ側の電信柱の下に、先の事故で亡くなった男性へのものであろう花束が供えられているのが目についた。 しかし、そこに線香は焚かれておらず、周囲にも煙が漂っているのも目視できない。 “なんだろうな。変なこともあるもんだ” いちいち足を止めてまで調べる気にもなれなかった兄は、それ以上首を突っ込むこともなくそのまま交差点を通り過ぎた。
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