628人が本棚に入れています
本棚に追加
朝食のパンが焼けるいい匂いがして、ジェフリーは目を覚ました。
はて、ホームベーカリーをセットして寝ただろうかと思いながら、寝乱れたベッドから滑り下りる。
下着一枚のだらし無い姿だが、どうせ一人暮らしの男やもめだ。気にする事もない。
ガリガリと腹を掻きながらリビングに足を踏み入れると、無人のはずのそこに人影があって思わず悲鳴をあげる。
「うわあ!……あれ?」
そこに居たのは、一体のアンドロイドだった。
鈍色に光る鋼のボディは、人間の筋肉の形を模してはいる。だが角ばっていて硬そうで、人間らしい柔らかさは皆無だ。
顔は、人間と同じ位置に目の形のセンサーはあるが、鼻はない。口は鉄の牙が並んだ凶悪な裂け目だ。
敵を威嚇する為に、わざと恐ろしく威圧的な顔にデザインされているこの異相――戦闘用アンドロイドだ。
「あー、そう言えば。拾って帰ったんだっけね」
アンドロイドの墓場で、ジェフリーはこのアンドロイドを見つけた。
おそらく廃棄の際に、バッテリーを外し忘れていたのだろう。ボロボロで壊れかけていたが、まだ動いて生きようとしていた。
そんな彼を放ってはおけず、トラックに乗せてもらい家まで連れ帰り、簡単な応急処置だけ施した。
その後、疲れて寝酒を飲んで眠ってしまったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!