第九話 ある機械兵士の恋

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目の前で幸せそうに眠る、愛しのジェフリーを眺める。 ここに至るまでの事を思い返すと、リアムは『生きていて良かった』と思えた。 昨夜は、ジェフリーが義肢装具士の資格を取れたお祝いにご馳走を沢山作り、デザートにはリクエスト通りバナナカスタードパイを焼いた。 食事が終わればベッドで思い切り甘やかし、ジェフリーが蕩けていく姿を堪能した。 初めは嫌がっていたステンレスの性器も、15分の時間制限も、射精しても続行できる設定も、いまだにそのままだ。なんだかんだと、ジェフリーはこれが気に入っているのだろう。      満足して寝入ったジェフリーは、とても満たされた表情だった。 「ジェフリー、本機は貴方の為に生きています」 そう囁いて、ベッドの下に隠しておいたあるものを取り出した。 それは、小さな箱だ。 開けると、指輪が二つ入っている。 タングステン合金製のリングだ。ダイヤの硬さを持ち、錆びる事もない特殊合金。 ジェフリーは雑でずぼらだから、プラチナやシルバーでは手入れが出来ずすぐ悪くするだろう。 決して劣化せず、決して壊れないこの指輪は、リアムからジェフリーへの気持ちを表すのにぴったりだとも思った。 指輪の店は、スクラップ場の同僚に教えて貰った。リアムには指輪を選ぶセンスはない。店員も色々おすすめも教えてくれて、みんなで悩みに悩んでこれにした。 ずっと前から、ジェフリーが義肢装具士の資格を取れたらプロポーズしようと決めていたのだ。 法的にはアンドロイドと人間は結婚など出来ない。だが、夫婦を名乗るのは自由だろう。 これから、彼が年老いて天に召されるまで、彼の変化をずっと隣で見ていたい。 そして、その間ずっと、彼を幸福に満たし続ける。 その決意を込めた大事なタングステンリングを、互いの左手薬指に嵌めた。 「ん、……んむぅ……」 指を絡めて握るが、熟睡しているジェフリーは起きる気配は無い。 朝まで、ずっとこうしていようと決めた。 「起きたら愛していると伝えて、貴方に朝食を作ります。ジェフリー」 プロポーズされたジェフリーは、どんな顔をするだろうか。 それを想像するだけで、リアムの鋼鉄の胸も暖かいもので満たされた。 機械兵士と愛あるブレックスファースト 完
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