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第四話 擬似的な××
そろそろ、本気で職を決めなければ。
いつものスーツに袖を通して、ジェフリーは気合いを入れる。今日は髪もワックスで整え、ネクタイも新しくした。
「どうだい、リアム。髪を綺麗にしただけで、少しは賢そうに見えないかい?」
「本機には賢そうという感覚が分かりません。東谷先生は実際に賢い方でしょう」
「んー、見た目の話だよ……」
今日はこの後、面接がある。書店員のアルバイトだが、とりあえず無職のままよりはいいだろう。それに従業員割引が使えるらしいから、久しぶりに本を買って読むきっかけになるかもしれない。
まだ少し時間があるからと、ジェフリーはソファに座ってテレビを付ける。
たまたまチャンネルが合っていたローカル番組で、オリビアのメインストリートのイルミネーションを紹介していた。
ずらりと並んだ街路樹を、LEDの明かりが飾っている。まるで天の川のようだ。
「そういえば、もうすぐクリスマスかぁ」
すっかり忘れていた。
もう何年も、クリスマスなど関係ない生活を送ってきたのだ。
だが、今年は違う。
「はい、来週の日曜がイブですが――」
リアムが運んで来てくれた熱いコーヒーを啜る。
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