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第五話 胸の灯し火
ちゅぷ、ちゅぷ、と。湿った音が鼓膜を嬲る。
硬くて鉄の味がするリアムの指が、口の粘膜を擦り上げながら出入りした。
「ん、んっ、ふっ」
顎を涎が伝い落ちる。それが嫌で指を舌で押し返そうとしたが、愛撫を強請ったとでも思ったのか。舌の表面をくりくりと撫でられ、上顎まで撫でられた。
「ふ、ひゅっ、う、んぅ」
「東谷先生。満たされましたか?」
「ん、うー、う」
いつも食事の時に「お味はいかがですか?」と尋ねるのと同じトーンで、リアムはジェフリーに問いかける。
ここで頷かなければ、終わらない。
コクコクと首を縦に振ると、リアムはちゅるんとジェフリーの口から指を抜いた。
「は……はぁ……」
やっと呼吸が楽になる。口を開けて喘ぐジェフリーの髪を、リアムの鋼鉄の手が撫でた。
冷たく硬いリアムの指が、髪を梳く感触は悪くない。
「では、東谷先生。おやすみなさい」
「ふぁ、ああ、おやすみ……」
ジェフリーの口元をティッシュで拭ってから、リアムはベッドから離れる。ようやく解放された安堵と、ほんの少しの寂しさを感じた。
ぱたんと寝室のドアが閉まると、ジェフリーはため息を吐いてベッドに大の字になる。
「あー、もう………」
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