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「――ゴホッ、ゲホッ」
勢いよく放たれた大量の精で噎せ、そのまま床の上に吐き出してしまう。床に広がる粘着質の白い液体から、むわっとオスの臭いが立ち上る。そして、全てを吐き出した上に、透明の雫がこぼれ落ちた。
「おや? 飲んでくれなかったのですカ? 残念デス」
残念だとか言いながらもそれを一切感じさせない冷笑混じりの声が届き、一度離れた手が再び伸びてきた。
「――ひぃっ!」
俺は咄嗟に手を振り払い、立ち上がることもできないへっぴり腰で逃げ出した。
逃げなければ。そればかりが頭を駆け巡る。どうにかリビングに辿り着くも、頭の中は恐怖が占領してしまっている。
……けど、俺は自分の身体に襲い来る異変も感じ始めていた。
「はぁ、はぁ……」
凄まじい動悸が胸を襲い、吐き出される息が熱っぽくなっている。あんなことをされ、途方もない恐怖と怒りを感じているんだから、心拍数が上がってもおかしくはない。けど、この身体の奥から広がる熱は何だ? 俺の知らない部分が何かを求めて疼いているような感覚……。不快なようでそうでもない……、訳の分からない熱が全身に広がってくる。
四つん這いで床を這い、リビングのローテーブルに手をつき、そこにあるはずの携帯を探す。しかし、じわじわと高まる熱は身体を支配し、内側だけでなく男の部分にまで支配の手を伸ばしてくる。
「な……、なんだこれ……」
とうとう、動くこともままならなくなり、上半身はローテーブルの上に落ちてしまう。木製のテーブルが空調で程よく冷やされていて、気持ちよく感じてしまう。だが、すぐに自分の発する熱でその恩恵もなくなってしまう。
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