野間さん家の居候

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 だが、音はふいに止まり、ヒンヤリとした手が火照った頬にあてられた。軽く力が入り、くいっと上向かされて視界が移動する。 「――――んっ!?」  潤んだ視界に整った綺麗な顔が映り、切れ長の眼差しが迫ってくる。そして、熱を吐き出す口が冷たい唇に塞がれた。  その口づけはこれまでの一方的で乱暴な行動とは違い、変に優しさを感じられるものだった。角度を変えながら柔らかく啄んでいく優しい口づけに、気を許してしまいそうになる。小さな変化だったが、それが無意識に表に出てしまったのか、うっすらと開いた口唇の隙間から舌のような物が差し込まれてきた。舌とは思えない冷たさを持った二本の細いうねりが、俺の舌に絡まり様々な場所をこそばゆく擽っていく。口腔を犯す異形の舌の冷たさと自分の発する熱が解け合い、ただでさえ朦朧としている思考をさらにおかしくさせる。 「ん……んっ。……っふ」  口腔を十分に堪能したのか、ゆっくりと唇が離れていく。遠ざかっていく口には二本の細い舌先が覗き、濡れた唇を撫でていた。自分たちとは異なる生態を垣間見たのに口づけに絆されたのか、舌の形状そのものに恐怖を抱くことはなかった。  しかし、宇宙人の顔が視界から消えた後、俺はこれまでで一番の恐怖に襲われた。 「――――へっ!?」  突如、腰を掴まれ、上半身のほとんどをローテーブルの上に押し上げられた。そして、体勢的に突き出す形になった臀部を太股の裏からするりと指で撫で上げられ、がしりと双丘が掴まれた。冷たい手が双丘を乱暴に押し広げ、その奥の窄まりにぬめった冷たさが触れた。滑らかで繊細な動きから、見えずともそれが指だと判断できた。
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