64人が本棚に入れています
本棚に追加
面倒だと言っても、近くのスーパーまでは徒歩で五分もかからない。それでも憂鬱になってしまうのは、夕方の空気広がる街並みが苦手だからだ。
「…………あれ? なんか……変だな」
苦手な時間帯ゆえに気合いを入れて外に出てきたのだが、なぜかそこにはいつもと違うの空気の流れを感じた。
追いかけっこをしながら帰宅している小学生の姿も見かけない。買い物袋を下げた主婦の姿も心なしか少ない。それどころか、サラリーマンや学生といった年頃の男性の姿が一切見当たらない。その代わり、胸元から腹筋辺りまでばっくりと開けた光沢のあるつなぎを着たイケメンたちがやたらと目に入ってくる。
「何だろう。何かのイベントかな?」
町内で何かお祭りの予定でもあったかなと考えながら歩き、道の端に佇んでいたイケメンを眺めていると、偶然にもそのイケメンと目が合ってしまった。
そのイケメンは、艶のある黒髪をさらりと風に靡かせ、会釈をして通りすぎていく俺を鋭い眼差しで見下ろし射貫いてきた。切れ長の鋭い眼差しの奥に、夕焼けの太陽に照らされた薄茶の瞳が輝いている。
同性だというのに、男性の容姿の美しさに思わずドキリとしてしまった。なぜだか、立ち止まってじっくりと見つめてみたい衝動に駆られてしまうが、見ず知らずの人をまじまじと見るのは失礼意外なにものでもない。俺はもう一度小さく会釈をし、気持ちほど足取りを早めてスーパーへと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!