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そして、外で感じた異変は、寄ったスーパーの店内にも広がっていた。
夕方のスーパーと言えば、夕飯の買い物客でごった返している時間帯だ。主婦はもちろん、仕事帰りの人など老若男女が買い物カゴ片手に店内をうろうろとしているはずだ。それなのに、今日の店内は酷くがらんとしていた。異様な様子に外と同じ空気を感じる。その証拠に、客どころか店員さえも女性の姿しか見当たらない。違いと言えば、あの光沢ある妙な服を着たイケメンたちが居ないぐらいだ。
いつもと違う雰囲気に戸惑いながら店内をうろついていたが、戸惑っているのは俺だけではないようだった。女性たちも一様に戸惑いの色を露にしている。しかし、それはなぜか俺個人に向けられているような気がした。
「いらっしゃいま……えっ!? 野間さん? どうしたの、一人?」
レジにカゴを置くなり、レジに立っていた近所の奥さんが驚いた顔をした。すぐさま話しかけてきたのだが、なぜか店内で感じていた戸惑いの雰囲気も一緒に向けられた。
「こんにちは。もちろん一人ですけど、どうかしましたか?」
奥さんは商品を手際よく精算しながら、さらに驚いていた。
「なんか、今日はずいぶんと静かですね。お客さんも疎らで、おまけに男性社員さんも居ないし」
よく知る奥さんということもあり普通に話しかけているが、奥さんはただただ驚いているといった感じで、手を止めることなくあんぐりと口を開いている。
「野間さん、ニュース観てないの?」
ようやく返事が来たかと思えば、全く話が繋がらない返答だった。
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