野間さん家の居候

8/50
前へ
/50ページ
次へ
 玄関先でご婦人と別れ、異様に疲れてしまった身体を引きずり台所へと向かう。買ってきた中で、今晩の夕食用以外の物を冷蔵庫に仕舞い、ふと思い立ち台所を出た。 「うわぁ、本当だったんだな」  一日観ることのなかったテレビを付けてみると、そこにはSF映画のような光景が映し出されていた。世界各国に現れた巨大な円盤形のUFO。円盤下部の中央にあるレンズ状の部位から青白い光が放たれ、外で見かけた光沢のある服を着たイケメンたちが地上に降り立っている。それこそ映画のような光景に、内心ではこの映像もバラエティ番組の一部だろうと疑う気持ちもあった。しかし、チャンネルを変えても同じ画面ばかりが映り、これが今まさに起こっている現実なのだと知らしめていた。 「まさか、宇宙人襲来とはな……」  この世に生まれて四十年と少し。戦争も知らない世代の俺が、諸外国とではなく宇宙との戦争を体験することになるのか……。変に感慨深い気持ちになってしまう。 「それにしても、男を攫って何をするんだろうな。やっぱ、戦力を欠くための作戦かな? でも、あんな宇宙船を造れる技術があるんだから、映画みたいにビームで一撃とかできそうなもんだけどな。……何か違う目的があるのか?」  同じ情報を繰り返し流す画面を眺め、色々と考察を並べてみる。しかし、国が情報を把握しきれていないのに、一般市民である俺がそれを知る術はない。そうやって考えている間も、内容の変わらない映像が流れ続けている。さすがにずっと同じものを見続けるのは苦痛だし、早々にテレビを消して夕食作りに取り掛かった。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加