9人が本棚に入れています
本棚に追加
星野未来ちゃんの姿を再び見ることになったのは、それから一週間後の6月12日のことだった。
mirai_movieというアカウントによって投稿された動画に、笑顔の星野未来ちゃんが映っていた。
以前の動画と同じように、未来ちゃんは絵を描いている。何かを喋っている様子だが、相変わらず無音だ。
数分後、クレヨンを置き、描いたものをこちらに向ける。
未来ちゃんの絵に描かれていたのは、道路だった。白と黒で塗られた道路の上に、大きな灰色の棒が横たわっている。その棒のようなものから、赤色や黄色の何かが飛び出しているように見えた。
前回同様、写実的とは言い難い絵だが、前の絵よりも画力は上がっている。それは、咲希の鳥肌が証明していた。
これは、間違いなく交通事故の絵だ。それもただの車同士の事故じゃない。咲希には、灰色の大きな棒が、横転したトレーラーに見えた。
登校すると、いつにも増して恵梨香はテンションが高かった。
「あの動画の再生数見た?5千万回だって!すごいよねー」
星野未来ちゃんは、もうすっかり有名人だった。誘拐された女の子としてももちろんだが、あの絵の、妙な生々しさが、動画のコメント欄に様々な憶測を書き込ませていた。
『未来ちゃんには本当に予知能力があって、それが誘拐された理由なのでは?』
『誘拐犯が捕まらないのは、未来ちゃんが警察の動きも予知しているからだと思う』
『いやあり得ないって。未来ちゃんは犯人に命令された通りに描いてる。唇読めばわかるだろ。ホテル火災はたまたま的中しただけwww』
咲希にはもちろん、予知能力はない。ただ漠然と、イヤな予感がした。
この絵に描かれていることは実際に起きる。何の根拠もないけれど、そう思わせる絵だった。
最初のコメントを投稿しよう!