8

27/28
730人が本棚に入れています
本棚に追加
/530ページ
「うわ………どうしたんですか?これ?」 事務所に入るとクローゼットに収められていた靴の箱が全部出され山積みになっていた、春哉は来ておらず最初は神崎一人だと思っていた 「誰?」 胸の高さまで何重にも積み上げられた靴箱の影からニュっと顔を出した………またイケメン………ふうっと額の汗を拭い立ち上がると見えていた頭の大きさから想像した身長よりもずっと高い 「淳さん、そいつが噂の秋山です」 靴とパソコンに隠れて姿の見えない神崎の声がした 噂と言われたって事は………噂されていたんだ 「へえ、最近売れてるらしいね、仁が熱心に押してるって話は聞いてる」 淳は名前すら言わなかったが顔は知っていた、FACT所属とは知らなかったが雑誌やテレビでよく見かける、秋山や秋人にとっては遠い存在の芸能人と言っていい 「淳さんの事はよく知ってます、俺なんかより余程有名じゃないですか」 「当たり前だヒヨッコ」 比べるなと、鼻を鳴らし恐らく靴の入った鞄を肩に担ぎ上げ足元にあった空の靴箱を蹴散らした 「丁度いいお前これ片付けとけよ、奥の靴がカビてたからついでに磨いとけ」 「え?!」 「後輩だろ?」 「はあ……………」 「淳さん!!自分で広げたんだから片付けて行ってください」 散らかしたまま帰ろうとする淳に神崎が注意したがまるで聞こえてないように無視して乱暴にドアを閉めて出ていってしまった 「全く…………」 神崎は山と積まれた靴の箱をゲンナリした表情で見つめ溜息をついた、淳は挨拶もなしにやって来ていきなり靴を乱雑に探し始めた、どうやら蛇革のウエスタンブーツを探していたらしいがそれから見つかったのは殆どクローゼットが空になり床に歩くスペースが無くなった頃だった
/530ページ

最初のコメントを投稿しよう!