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空港からすぐにタクシーに乗ってしまいタバコが吸えない、選べば良かったのだがタクシー乗り場は混んでおり順番に来た車に乗るしかなかった 座席の前には厭味ったらしく"禁煙"と赤い文字で書かれたプレートが貼り付けられ、いいですか?と声をかける前に挫かれた 後一時間は我慢するしかない……… 事務所に帰り着きドアを開けるとクローゼットに詰まっている筈の靴箱が山程積まれて足の踏み場もない 「何だこりゃ…………ったく……」 散らかっているのは大嫌いだった エイッと跨ぐとついでに誰かの頭も越してしまったが別にいい………… 取り敢えずタバコとコーヒー……… 口に咥えたマルボロの先にライターで火を付けると並んでいる醤油やお酢の小口差しがバラバラ色んな方向を向いているのが目に入った、こんな事が気になるのは自分だけなのだがどうしてちゃんと並べないのか……と綺麗に揃えた 飛行機を降りて直ぐに携帯の電源は入れたが中はまだ見ていなかった、画面を点灯してメールと不在着信だけをチェックして急ぎのリターンだけでも時間がかかりそうでげんなりした すぅっと深くケムリを吸い込んで靴で埋もれたフロアに目を移すと……………… 口があんぐり開いて閉まらなくなり ポロンと口から落ちたタバコが床に火花を散らした 「仁………………何で………」 机から半分立ち上がり驚愕に目を丸くした神崎が口の中で小さく呟き………固まっていた
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