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「事務所に行っちゃ駄目でも外で会えるよな」 「それは………」 言いかけた神崎の口から次の言葉が出る前に胸のポケットから携帯が振動し始めた 「それは出来ないよ、何の理由で………」 一度画面をチラッと見た後そのまま切ってしまったが言葉を続ける間にまたブーブー音を鳴らしている 神崎はチッと舌打ちしてまた切った 「……理由もないし忙しいんだ」 「理由はあるよ、顔が見たいし話したい」 「俺には無い……」 またもや震えだした携帯に今度は無視を決め込んだ神崎を見ていると秋山にも秋人にも何となくだが相手の予想が付いた 「司………昨日仁とセックスしたの?」 ブハッと口の中が爆発した、どうしてシュウはこう何でも直球しか投げられないのかもう分からない 人並みのデリカシーも遠慮も、一欠片も持ち合わせていない事にはびっくりする 「……………したよ……」 表情も変えずサラッと答えた神崎の首にクッキリ浮かび上がる赤いシミはうわさに聞く多分………恐らく………きっと………あれだ…… キスマーク………… わざと付けられたように目立つ場所にくっきり浮き出ている、ヒイッと悲鳴をあげそうになった 自分とシュウならよくて仁と神崎だと妙に恥ずかしいのはいやに生々しいからだ さっきだって本気ではあったがあのオープンなアトリエでは精々キスくらいしか進めない、本気だなんて考えている自分に笑ってしまう 「どこで?」 また直球………黙れと口を抑えたい……… 神崎は答えないでフッと優しく笑い受け取る事を拒否されたバイト代が入った封筒をシュウの代わりに渡してきた  「秋山……悪いけど後で速水さんに渡してくれ……給料を受け取るのも働くって事なんだから」  神崎はポンポンっと愛しそうにシュウの頭に手を落とし体の向きを変えた 「司、俺を舐めんなよ」   「…………しっかり勉強してろ」 神崎はわざわざ大学までやって来て秋山だけをコッソリ呼び出し秋人のバイト代を預けようとしていた、つまりもう二度と会うつもりがないのだろう しつこく追い縋るかと思ったがシュウは後ろ姿の神崎に不気味な捨て台詞だけを投げて大人しく見送った
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