2 モデルという仕事

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「神崎!食ったらパスポート取りに帰れ、三時には出るぞ」 「行かないって言ってるだろう」 仁の心配はわかっている、何も事情を知らない相手に暴走しないかと疑っているのだろう、そこまで馬鹿じゃないと言いたいがフラフラと見に行ってしまった事で「また」監視しようとしている 「幽霊みたいに湿ってたくせに偉そうに言うな」 「ほっとけって……」 「その口塞ぐぞ」 またバトルが再燃しそうな雰囲気に春哉が苦笑いを浮かべて今度こそ穏やかに間に入った 「仁さん……今回は本当に無茶ですよ、俺が責任持って見てますから任せてください」 「何だよ春哉まで………俺は人の世話なんかいらないって」 「そう言っとけば仁さんも納得するでしょう?」 実は春哉から見ても神崎には不安定な所が時たまあった、言われるまでは何も気づかなかったが事情を聞いた後ではよく見える 別に激しく落ち込んだり機嫌を悪くする訳ではない ただ宙に目を止めて声が届かなくなる この前は仁が読み終わって捨てた本の入ったゴミ箱をジッと見つめて動かなくなった 神崎は多分本来そんなタイプじゃない ちょっと冷たい所があるがしっかりしていて本人が言うように人の手が必要な程頼りなくはない 本を捨てるのは仁の悪い癖だ それに何の意味があるのかは知らないが聞く事は出来なかった 仁はフンッと鼻を鳴らしただけで何も答えなかった 自分でも無茶は重々承知しているのだ
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