2 モデルという仕事

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2 モデルという仕事

「アキ!」 階段の上の方から声がして顔を上げるとシュルっと手摺を滑りまだ高さのある中程から手摺を超えて目の前にスタンッと身を低くして着地した 秋山から言わせるとシュウはいつもチョロチョロ落ち着きがない、跳んだり跳ねたり小学生のように要らぬ事ばかりしている 「昨日どうしたんだよ」 「用事があって街に出てた」 モデルの仕事をしている事はシュウだけには言ってあるが新しい事務所の事は言えない、仁は有名人なのだあまり公然と口には出来ない 美大の校内は広くて綺麗だ 私立の馬鹿高い授業料は着々と豪華な校舎の拡張に使われ郊外の広い敷地にデンッと構えている 「昨日来てたんだ」 「殆ど毎日行くじゃん、連絡しろよ」 シュウの肩に掛けた鞄のベルトがズレて垂れ下がっている、元に戻してやろうと手をかけると笑っているくせに跳ね除けた これはいつもの事 シュウは秋山にとって唯一と言える大学での友人だった、彫刻科が占領する制作室はそれぞれの作品を取り囲んだ小さなスペースを長い間独占するのでいつの間にかマイアトリエと言える要塞が出来上がる 自分の講義が終ると秋山の長らく何も進んでいない彫刻材料である丸太の側にやって来て中身の無い雑談をしていく
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