4・幸恵

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4・幸恵

病室のベッド。 子供は立派に自立した。 私達二人。 晩年の貴方はあの頃のように優しかったね。やっぱり、この人だった。そう、確信したわ。 幸せだった瞬間。もう少しね。 「幸恵……」 「生まれ…変わっても…また、一緒に…なろうな……」 小さな声で力強い言葉。 この言葉に夢を見たのね。 待ちに待った瞬間。 この言葉の為だけにこれまでたくさんの事に耐えてきた。 たったこれだけの為に……。 だけど、運命の人との二回目の人生は…… 「いえ、結構です」 静かに目を閉じる貴方。 力無く垂れる手。 手を握りしめることすらしなかった……。 さようなら。運命の人。 生まれ変わっても一緒になりたいと願った人と一緒になったら、もう一緒になりたくないと思った。 私はこの世で1番不幸せだ。 そして、思った。 だから、人生は一度きりなのかもしれない。
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