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 駅から家まで続く坂道の両脇は、鬱蒼とした木々で覆われていた。街路樹、というよりも、いっそ林といっていいだろう。両脇から伸びた梢は道路の中天までを覆い、緑のトンネルの中を通っているかのようである。昼に見たときは風情があり、美しいと感じたその光景も、夜となると話は別だ。  坂を上っていたのである。  仕事帰りであった。もう時計の針は零時を大きく回っている。時間が時間だけに、人影はない。ただ木々のざわめきと、自分の足音だけが、長く伸びた坂道に木霊している。
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