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仕方なく条件を出すことにした。
「条件がある」
「条件なんてありません。決定事項です」
「荷物全部捨てるか、オークションで売りさばくぞ」
「・・・・・・条件って何よ」
「家事をしろ。働かざるモノ食うべからずだ」
亜矢子はキョトンとしていた。
僕はそんなに酷いことを言ったのか?
はぁーっと大きなため息をつくと安心したような顔で言った。
「それなら安心して。もともと家事ぐらいはする気だったわ。食客でいる気はないもの。でも、私」
「私?」
「料理が出来ないの。だから、料理だけは康介が」
モジモジしながら言う亜矢子は、悔しいかな可愛く見えた。
「よし決まりだ。僕は食事、お前はそれ以外の家事。異論はないな?」
「望むところよ!見てなさい。アタシのスーパー家事テクを見せてやるわ」
力こぶを作るようなポーズで意気込みを語る亜矢子はどこか楽しそうだった。
「じゃあ今日は外に出るなよ。家の鍵僕のしかないんだから」
「外に出すのがそんなに心配なのね。お母さん、亜矢子はとうとう愛されてしまったようです」
窓に向かって合唱している。
「馬鹿みたいなこと言ってないで、家事、やっておけよ」
「もちろんよ!帰ってきて驚くわよ!」
「どうだか。じゃあ仕事行ってくるからな!」
「いってらっしゃい!」
なんだろう。
送り出されるのは悪い気分がしない。
おしかけ居候に言われたぐらいで、家で待って人がいると思ってしまっている自分がなんだかはずかしかった。
仕事を終えて家に帰る前に合鍵を作った。
亜矢子分である。
経緯はどうあれ、同棲をすることになってしまった訳で、鍵はないと困るだろうと。
それと、コーヒー。
ブルーマウンテンブレンドを買っていくことにした。
家について驚いた。
部屋の雰囲気がガラッと変わっていたのだ。
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