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家についてインターホンを鳴らしてみた。
「はい」
インターホンの向こうから亜矢子の声がする。
「俺だけど」
「あ、ちょっと待ってて」
30秒くらいで鍵が開いた。
「おかえり。今日もお疲れ様!」
なんだか体が痒くなるような気分だ。
インターホンを押したら鍵を開けてくれるなんて初めての経験だった。
亜矢子には悟られないようにしないと。
「なに嬉しそうな顔してんの?初めて出迎えられましたみたいな顔よ」
すぐにバレた。
亜矢子はエスパーなのか?
いつもと変わらずオムライスを作り、風呂に入って、居間で亜矢子世間話をしている時の事だった。
「あ、そういえば」
「なになに?面白いもの?」
僕はバッグから社員旅行のレジュメを取り出した。
「社員旅行?」
「そう。僕だけまだ出欠確認取れないからってな。こういう行事はあんまり好きじゃないんだよなぁ」
その時、レジュメに記載されている社員各位の部分が二重線で消されて高梨様になっているのを見つけて、そうとう急かされているんだと思った。
何のための提出期限なのだろう?
「ねぇねぇ康介!ここに、ご家族の参加も可能って書いてあるわ。その下に恋人の参加も大歓迎って書いてあるわよ!」
まるでアメリカ大陸を発見したコロンブスばりのテンションで亜矢子が言う。
「それが?」
ふんふんっと自分を指さしながら亜矢子がこちらの表情を伺っている。
「お前、ついてくるとか言わないよな?」
「ついて行くとは言わないけど、同行するわ!」
「それをついてくると言うんだ」
「でも、恋人も大歓迎って書いてあるわ」
「お前は恋人じゃないだろ」
「でも、ルームシェアしてるわよ!」
「それは恋人じゃなくてルームメイト。ルームメイトも大歓迎とは書いてないだろ」
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