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「えっと」
そういえば亜矢子の名字を知らない。
初めて会ったときは、枕返しの亜矢子さんよ、としか言っていなかった。
これはもう諦めるしか無いのだろうか。
「ちょっと待っててください」
通話を保留にした。
「亜矢子、お前の名字は?今聞かれてるんだ」
「自分の女の名前も把握していないなんて信じられない残念なことおミソね」
「おミソ!?僕の頭の問題だとでも言うのか?初めて会って名前が分かるほど僕はエスパーじゃないぞ!?」
「うるさいわねぇ、如月よ、キ、サ、ラ、ギ!」
如月?
確かあーちゃんも如月だったような。
電話を待たせ続けるわけにはいかない。
「あ、如月です。如月亜矢子」
「如月・・・亜矢子さんね。わかりました。じゃあ高梨さんもそのまま参加ですね?」
「はい」
無情にも参加が確定した。
そして、会社には僕に彼女がいるという偽情報が明日あたり流れているんだろう。
明日の仕事が憂鬱だ。
「じゃあ高梨さん。夜分遅くにすいませんでした。お疲れ様です」
「お疲れ様です・・・」
悲しい電話終了した。
枕返しのジョブが居候から偽彼女にジョブチェンジした瞬間だった。
「お前何してくれてんだよ」
「だって、近いうちに妻になる私としては旦那の会社ぐらい挨拶しておかないと」
「いつ妻になるんだ?妻というのは多くのケースが恋人という過程を経てなるんだぞ?それに、お前はまだルームメイトだろうが」
「まだ?まだなんだ」
亜矢子がニタッと笑う。
「いや、違う!今後!一切!無い!」
「またまたぁ強がっちゃってぇ」
僕の左肩を亜矢子人差し指でグリグリしている。
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