2返し目

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出逢ってしまった自称枕返しをスグにでも叩き出したいところだけど 聞かなきゃならない事がある。 「どうやって家に入った?」 「一緒に入ったじゃない」 「い、一緒に?」 嫌な汗が出る。 やはり、ひと夏のアバンチュールを・・・・・・。 いや、それにしては昨日は酔いすぎていた。 下手な手出しはできないはず。 それともなにか? 自称枕返しは僕の家から金品を盗む新手の窃盗犯なのか? 頭の中がぐるぐるまわる。 「それよりいいの?」 「何がだよ」 「時間よ!時間!アンタ会社員なんでしょ?」 ハッとした。 テレビの時間はいつも家を出る時間をとうに過ぎていて 遅刻へのカウントダウンの様だった。 「やばっ!もう時間が・・・!」 「ほら、早くなさい。遅刻するわよー」 馬鹿にするように自称枕返しは急かしてくる。 そんな状況でもテーブルの向こう側でコーヒーカップを離そうとはしていない様子。 「おい」 「なによ?」 「家から出ろ」 こんな奴を家には置いておけない。 何をされるかわかったものではないからだ。 「酷い!話していきなり出てけですって?冗談じゃない。アタシはまだアンタと話すことが沢山あるのよ!!」 なぜ逆ギレされなければならないのだろう。 「あぁぁ!それどころじゃないんだよ!これ以上やってたら本当に遅刻しちまう!」 僕は強引に腕を引っ張り家の外へ追い出した。 その間ずっと、痛いだのふざけるなだの騒いでいたがそれどころではないのだ。 追い出してから荷物を持ち、飛び出すように家を出た。 不思議なことに自称枕返しは家の前にはおらずどこかへ行ってしまっていた。
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