2返し目

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着替えるのが面倒だったので、スーツのまま台所に立った。 「オムライスよ!オムライス!ケチャップで亜矢子さんって書くのよ!」 この言葉を何度言われただろうか。 なんと、料理中ずっと言ってくるのだ。 卵、鶏肉、ピーマン、玉ねぎ、グリーンピースその他おおよそオムライスには混入しないであろうものに僕が手をかけるとやたらと騒ぐのだ。 それも凄まじい大声で・・・・・・。 僕の部屋は壁が薄いのに・・・・・・。 声量に負けてオムライスを作ることに。 幸いオムライスは昔たくさん作ったから自信はある。 出来上がったオムライスとケチャップをボトルごとテーブルに置くと、自称枕返しはかってに茶箪笥を漁りスプーンを調達。 飲み物まで用意して首を長くしている様子。 「食えよ」 「書いてない。」 「何が」 「ケチャップで亜矢子さんって書いてないじゃない!こんなのオムライスとは呼べないわ!恥を知りなさい!」 無性に殴りたい。 出しかけた手を引っ込めて、改めてケチャップのボトルに手を伸ばし、注文通りの文字を書いてやる事にした。 漢字が分からなかったので、平仮名で書いた。 書いている最中ふと昔仲の良かった友達の事を思い出した。 「あーちゃん、今何してんのかなぁ」 「何してるのかねぇ」 茶化すように言う言葉と裏腹に真面目な目つきの自称枕返しだった。 「平仮名じゃない」 「漢字知らないんだ。これで我慢しろ」 「・・・仕方ないわね」 何故かあっさり引き下がり、キラキラとオムライスを食べる自称枕返しがそこに居た。
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