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「そんなに綺麗に食べるのか」
自称枕返しは皿に油すら残ってないのではないだろうかという勢いで綺麗にたいらげた。
どこか得意げな表情がなんとも不愉快だ。
「さて、康介。食後のコーヒーがまだのようだけれど、あとどれぐらい待っていれば出てくるのかしら?」
さもお姫様のような口調で言われるがどこか違和感を感じてしまう。
「なんで、僕の名前知ってるんだ?1度も名乗ってないぞ」
「表札に書いてあるじゃない。誰だって分かることだわ」
ふんっとそっぽを向きながら、人差し指でテーブルを2、3度叩く。
どうやらコーヒーを早くしろとの事らしい。
「お前コーヒー飲んだら帰れよ?すぐ帰れよ?」
「せっかちな男って嫌われるわよ?」
「うるさい。僕はお前の母親じゃないんだぞ」
ドスドスと足音を立ててコーヒーを淹れるために台所に向かう。
そう言えばキリマンジャロはやめろって言ってたな。
そんなことを思っていると追加の注文が入る。
「砂糖とミルク多めに入れてよね。苦すぎるのは嫌いよ」
「ワガママな枕返しだな」
しかしこのイラつきもあと少し、あと少し我慢してコーヒーさえ飲ませてしまえば自称枕返しを追い返せる。
約束の時まで後わずか。
辛抱するんだ。
注文通りのコーヒーを作って渡すと、絶対離さないと言わんばかりにコーヒーカップの取っ手を握りしめた。
「ねぇ、康介」
「なんだよ」
「お前って言うのやめてもらえない?亜矢子って呼んで」
まだ注文を付けるというのか。
まぁでも、いきなりお前ってのは不躾すぎるか。
というより、僕より勝手に上がり込んで飯食って人を呼び捨てにするコイツのほうが不躾ではなかろうか?
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