3-5【R18】

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 忍の裸の肩にタオルケットを引き上げ、その寝顔をしばらく眺めた。忍に何事もなくてよかった。死ぬようなことがなくてよかった。   忍と出会えたことが奇跡だ。  こうして抱き合えることはもっと奇跡だ。  思いっきり抱きしめたい衝動にかられたが、起こさないようこさないようにそっと肩を抱いて額にキスとした。むず痒い感じがしたのか、忍が眉間に皺を寄せておでこの前で手を払った。虫を払うような仕草に思わず笑ってしまう。  愛しいし、守ってやりたい。けれど「守ってあげる」なんて忍が嫌がりそうだ。自分をしっかりもったひとだから、誰かに守ってもらうなんて望まないだろう。それに自分も非力な人間なのに、守ってやるなんて傲慢だ。  お互いに手を取り合って、同じ方向を向いて歩いて行けばいい。  腕を伸ばして枕元のランタンを点けた。眩しくないよう、つまみを絞って明るさを最小にした。  ランタンの黄色い光が、ぼんやりと枕元を照らす。  普段、眠るときは部屋を真っ暗にする。その方が昼間酷使している目が休まると聞いたし、特別暗闇に恐怖を感じたこともない。昼間だって、ネガティブな感情で興奮しすぎたときは、気分を落ち着かせるためにあえて目を閉じて暗闇を作るくらいだ。目の前に暗闇が広がるといつも一粒明るい星が浮かんだ。五十嵐を励まし、元気づけ、そして穏やかにさせてくれる忍という一粒の光。
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